■施設概要
 2000年春に完成したC+A設計の「ビッグハート出雲」は出雲市駅南口にあり、施設内には、コンサートや講演会のできる「白のホール」や音楽の練習から会議まで使用できる「茶のスタジオ」・「黒のスタジオ」、アートギャラリー、会議室などがあります。人的交流や芸術・文化の発信等を目的としたレンタル・スペースといえます。 (「ビッグハート出雲」公式HP

■プロジェクト解説
 C+Aから依頼されたシミュレーションの内容は、アメダスのデータを用いてジャロジー窓の開閉パターンを検討することでした。ビッグハート出雲の特徴は、外部環境の変化によって呼吸するように動く、このジャロジー窓にあります。 窓の開閉状態は、ガラスの角度によって5段階があり、全ての窓が一斉に動くのではなく、78あるブロックごとに開閉を駆動するモーターによって、それぞれが時間差をおいてバラバラに動きます。これらの窓は全てコンピュータにより制御され、外部の気温・湿度・雨量・風速の各センサーから信号を受けて、つまり環境の変化によって、呼吸するように開閉する訳です。
 窓の開閉を制御するアルゴリズムを具体的に説明すると、例えば風速が毎秒1メートル以下なら全開、1〜2メートルなら30度の角度、2〜4メートルなら7.5度の角度とする等々、窓の角度を判断する閾値を設定します。このシミュレーションでは、出雲市の1年間365日にわたる気温・湿度・雨量・風速の、時間ごとの変化データ(アメダス・データ)をもとに、窓の角度を判定する閾値をどのように設定すれば良いか、様々な検討を加えました。閾値を細かく設定しすぎると、窓の開閉が頻繁になり、モーターの疲労を招きます。また逆に、大まかにすると全く変化に乏しいものとなってしまいます。予め年間を通じた窓の開閉シミュレーションを行うことで、各窓ブロックの閾値について、最適と思われる値を求めることができました。
 コンピュータを用いたデザイン・シミュレーションでは、シミュレーションにおける時間のファクターを、ある時点で停止して、建築の形を決定する場合が多いのですが、このプロジェクトでは、そうした時間のファクターを停止することなく、環境とのインターラクションにより建築が常にその様相を変えていきます。このことは、これからのコンピュータ・サイエンスと建築デザインの関わりにおいて、新しい方向性を示すものではないかと思います。
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